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HUMARIZINE No.04 TRUE

HUMARIZINE No.04 TRUE

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今号のテーマは「TRUE」である。2019年からHUMARIZINEを続けてきたれいぽんと松岡大雅は2023年1月にstudio TRUEというデザイン事務所を設立した。 自分たちでデザインという仕事をしていくにあたって楽しみがある一方で、あらゆる不安や焦燥感を感じる日々である。そんな現実に直面する中、人生の先輩である面々にインタビューさせていただき今私たちが何をすべきか、何を考えていくべきかを聞かせてもらった。 インタビューにはれいぽん・松岡大雅だけでなく村松摩柊、佐野虎太郎、かねだゆりあにも同行してもらい、studio TRUEひいてはHUMARIZINEが目指している共同体をつくることを共に考えながら制作に加わってもらった。

編集

れいぽん

松岡大雅

執筆

村松摩柊

れいぽん

佐野虎太郎

金田ゆりあ

松岡大雅

スペシャルサンクス

まつざき淑子

來住友美

川口瞬

秋吉浩気

永井玲衣

エディトリアルデザイン

松岡大雅

表紙

れいぽん

ポートレート撮影

宮原壱歩

書『TRUE』

細江澄日

はじめに

れいぽん

2019 年、大学4 年生だった私はクソみたいな社会に対して抱いた怒りをきちんと社会に問うために「人間的である、ということへの追求から社会を拓く」を掲げHUMARIZNEをはじめた。そして同時にHUMARIZINE は社会を共にサバイブする共同体をつくるため、仲間たちとの制作を通して世の中を少しでも良くしていくことを目指して活動してきた。
HUMARIZINE5 年目になる今年、私はスペインの大学院を卒業して帰国し、さらに劣悪化した社会を生きている。HUMARIZINE を4冊出す間に、当たり前だが私も、世の中的にもたくさんのことがあった。侵略によって多くの命が犠牲になったし、想像できなかったテロや犯罪がたくさん起きたけれど、私たちは相変わらず平和ボケして生活している。経済にまで影響が出て物価ga
上がっても賃金は上がらない。都合よく制度を変えるくせに「社会が変わってしまう」と多様性を認めない政治家がいる。私自身が前進できているのかはわからないが、社会は変化はすれど後退している気がする。HUMARIZINE が4冊出て、社会がどのように拓かれたか。この活動を続けることに対する100% の必要性は感じつつも、もっと具体的に持続可能な方法でアウトプットを続け、制作活動をする必要があると感じた。2023 年、私は松岡と合同会社studio TRUE というデザイン事務所を立ち上げた。
studio TRUE は「社会をサバイブするための共同体と循環をつくる」をビジョンに掲げるデザイン事務所だ。デザインを通して共同体と循環をつくることを目的に実践を続け、多くの人や物と共存し、互いの活動や生活を支え合いサバイブする。まずは私たちが活動を開始する東京都狛江市からその共同体をつくり、仕事も生活も循環させていく。同時に、デザイナーや建築家・アーティスト同士のネットワークも構築していく。それはHUMARIZINE のような出版活動、これまでふたりが学部・修士を通して研究してきた廃材や廃棄などを用いた制作、そして設計やリサーチ、イベントや展示の開催などを通しつくっていく。
HUMARIZINE は30 年続けると言ったが、studio TRUE は死ぬまで続けていくだろう。私たちは小さいけれど継続していくことを信念にしている。奇しくも、事務所開設の話をした際に「目の前にあることをきちんとやって続けていったらなんとかなるもんだ」と自分で仕事をつくっている先輩たちみな口を揃えて言ってくれた。デザイン事務所としても、社会をサバイブするための共同体と循環をつくることに対しても、なんとかなるだろうか。事務所を設立した今、自分であらゆる決定権を持つことへの引き換えにたくさんのネガティブな側面も背負っている。私たちは下積みを経てからの独立ではないゆえ、そこで培うことのできる貯金も仕事上のつながりもあるわけではない。不安なくご飯が食べられるお金も家もないが、極限環境でも耐えられる特別強い人間でもない。事務所のプロジェクトに満足に投資ができる余裕もないし、どこから仕事が来るのか、どうやって仕事をつくるのか、と次から次へと現実にある課題や焦りは目の前に突きつけられる。しかし、それでも私たちには応援してくれる人がいる。こうして今号で協力してくださった人生の先輩たちも、いつもの仲間もいる。もはやみんながいてくれる以上「なんとかなる」を信じるしかない。冒頭で声高に宣言してはいるが、不安と希望が入り混じった気持ちを正直に受け止めながら私たちはコツコツと制作を継続し、クソ社会を仲間と共にサバイブしていくのだ。(と、自分に言い聞かすのである。)


対談|studio TRUE始動

れいぽん×松岡大雅 / 書き手:松岡大雅

インタビュー|まつざき淑子ー市民活動と議員を掛けるなかでつくる社会

聞き手:れいぽん / 書き手:村松摩柊

本インタビューは、デザイン事務所studioTRUEが狛江市を拠点に活動することをきっかけとして、狛江市の「まちづくり」に関ることのヒントを得ようという意図のもと、狛江市議員であるまつざき淑子さんに 伺ったお話をまとめたものである。狛江市の議員の中でもまつざきさんに依頼をしたのは、現在まで市民活動を続けながら議員としての役割を担う、市民との距離が近い議員というであることが理由だった。 一人の市民から議員になり、議員と市民活動を越境するまつざきさんの姿から、デザインと市民をまたごうとする私たちが得られたことをみなさんに共有することができたら幸いである。


インタビュー|真鶴出版 來住友美・川口瞬ー試行錯誤しながらふたりで生活し、仕事すること

聞き手:れいぽん・松岡大雅 / 書き手:れいぽん

私がHUMARIZINEをはじめた時、真鶴出版さんのことは既に知っていた。夫婦ふたりで出版と宿をやっている、しかも真鶴で。ずっと訪れたいと思っていた。都内から東海道線に揺られ三島にすむ私の祖父母に会いに行く道中にある真鶴駅は、海が輝いて、いつも降りたいと思っていたがきっかけを掴めなかった。今回松岡と事務所をはじめ、私たちも夫婦ふたりで狛江で出版もやることになり、これはチャンスだと真鶴出版さんにメールを送った。出版について、地域でやることについて、ふたりで活動することについて、今私の脳内を占めるお話ししたいことリストを、冬の真鶴出版で聞かせてもらった。


インタビュー|VUILD 秋吉浩気ー「独立」をデザインする

聞き手:松岡大雅 / 書き手:佐野虎太郎

まだまだ肌寒い日が続く2 月初日。神奈川は川﨑、VUILD 株式会社ヘッドクォーターにてHUMARIZINE メンバーによるメタアーキテクト・秋吉浩気へのインタビューが行われた。JR 川崎駅
からまっすぐ南西に歩いていくと、冷たく殺伐とした工業地帯の街並みの中に突如として馴染みのある匂いが漂ってくる。僕たちが毎日大学の制作現場で嗅いでいた、あの木粉と機械の匂いだ。入り口のドアを開けると、秋吉はスタッフ数人とオンラインミーティングをしていた。プラスチックのカーテン越しに、奥でスタッフがトリマーを使って切削後の木材のバリをとっている姿が見える。3階に通され、デジタル工作機械を使って造作された4畳半程度の広さのミーティングルームにて、かつて学生バイトだった松岡と秋吉との数年越しの再会が実現した。
以下はその一部始終である──────。


インタビュー|永井玲衣ー絶望する社会からやってくる問いと共に生きる

聞き手:松岡大雅 / 書き手:かねだゆりあ

「本に救われる」という体験をよくするけれど、この本もまた救い… というか、降ってきたというくらいピタリとはまった。この社会へのどうしようもないやるせなさと、それでもなおかつこの世界に期待していたいという矛盾に満ちた、もがいている気持ちをまるで代弁してくれるかのように、素直にすぅーっと沁みるような文章で書かれてあった。絶望は終わらないけれど、この本を読んでいくらか楽になった。絶望していたときに、追い詰めてきた感情も、考えることをもっともっと突き詰めれば世界の愛おしさが見えるのかもしれないと思えた。私たちは絶望の縁に追いやられているけれど、生きていかなきゃいけない。
だから、これはもちろんインタビューなのだけれど、私は、素直に永井さんの世界との向き合い方を聞きたい、そして私たちが感じている絶望を聞いてほしい、ありのままの自分で永井さんの向き合う時間にしたい、と思う。そんな気持ちで永井さんにお会いするのをそわそわ待つ。


対談|おわりに

れいぽん×松岡大雅 / 書き手:松岡大雅

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