はじめに
れいぽん2019年にHUMARIZINEを始めてから、早5年。今号HUMARIZINE No.05は6冊目の出版物にあたる。私たちは社会をサバイブするための共同体をつくることを目的として、出版というプロセスの中で仲間と共に制作をすることを前提に活動を続けてきた。そして自らの制作活動を毎年アーカイブして積み重ねていくこと、共同体自体のあり方を考えていくことをやってきた。
昨年HUMARIZINEでこれまで長く関わってきたとある参加者がもう一人の参加者と不誠実な関係性に陥り、HUMARIZINEという共同体が巻き込まれた結果、大きな損害を被った。これまで続けてきた関係性が崩れ、HUMARIZINE自体も考え直さざるを得なくなり、ショックを受けた。しかし、共同体はそういったリスクも孕むものであり、そのようなことですらもアーカイブすることで、HUMARIZINEがどうあるべきかを客観的に見ることができる。それこそが出版をやる意味かもしれないと思った。
他にも大変なことは多々あったが、出版を続けていくことは自らも制作も前進させる大きい役割を担ってくれている。出版をすることで人と出会い、ネットワークも広がっている。
そもそも、HUMARIZINEという出版をやることになったきっかけは私が大学一年生の頃に本づくりをした経験にある。大学プロジェクトの広報兼アーカイブとして出版した本だったが、制作のプロセスを通してさらにプロジェクトの全容を深ぼることができると気づいた。人と話し、つながり、失敗したことも含め、テキストをまとめる上で考える。そのプロセスをやることが活動においては重要なのだと感じた。
このように私のいう「出版」はそのプロセスであり、活動をアーカイブすること、本という形にその時点までの出来事をピン留めすることである。しかし、出版の側面はそれだけではない。出版もただアーカイブするだけでなくそこには編集、校正、校閲などの作業も入ってくる。もちろんエディトリアルデザインや、装丁も本の内容とは別に大きな役割である。また、本は売らなければ持続的に出版できないため、その販路や営業などは重要である。そもそも本をつくるために印刷することを版権=権利化だという人もいるし、自費出版でZINEをつくることも、もはやムーブメントのようになっている。出版の社会的な意味合いは多様である。
このような出版に対しての考えを巡らせるために今回は「本」や「出版」にさまざまな側面から関わっている方々に参加してもらった。彼らとの制作を通じて「本」や「出版」に対して広がりを持った本づくりが展開できることを期待する。
そして、HUMARIZINEをはじめ、5年経った今年、SFCで出版に関する授業を受け持つことになった。その授業でもプロジェクトアーカイブのための本づくりを行う。活動をアーカイブすること、本にすることがどのような意味を持つのかを考えていく予定だ。同時に、今号で考えたこと、議論したことを反映し、出版の多様な側面を見せることができたらと思う。今後、出版に関わる学生が増えるか否や、それもアーカイブしたい。