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HUMARIZINE No.02 家族

HUMARIZINE No.02 家族

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れいぽん・松岡大雅・佐野虎太郎に加え今年は大学入学当初からの友人である日下真緒、関口大樹を新たなメンバーにNo.02の編集を行なった。今年4月にれいぽんと松岡が結婚し、家族になったことをきっかけにテーマを「家族」とし、それぞれの研究や実践と接続して議論を進めた。

今号は執筆から編集全てをメンバー5人で完結させており、実際に集まり議論をしながら内容を決めていった。それは目次がれいぽん・松岡のインタビューに委ねられていることからも顕著である。今号出版のもう一つのゴールとして、れいぽん・松岡の結婚式も編集メンバーを中心に開催された。HUMARIZINEが目指す共同体や、今後のやり方にヒントを与えることになった一冊である。

編集長:寺内玲 

編集:松岡大雅・佐野虎太郎・日下真緒・関口大樹 

エディトリアルデザイン:佐野虎太郎

文章中インタビュー出演:大橋香奈 

表紙絵:寺内玲

 裏表紙・書「人」:細江澄日 

はじめに

れいぽん

私が HUMARIZINE を立ち上げた理由は、信じられる仲間と共同体をつくり、共に生きていくことをしたかった からである。 私は生まれてこのかた、自分の「家族」を心から信じられたことがない。それは物心ついた頃からずっとそうで、 「家族」という共同体が自分にとって一番に身近で一番の遠いものであった。脱色した髪の毛や体に刻まれた アイコンは間違いなく、家族への猜疑心を私なりに昇華した結果だ。私はそれらを一つのまじない的なものとし、 自分は自分として生きるための糧にした。 一方で、家族的な共同体、唯一無二のつながりへの憧れは人一倍あったのかもしれない。ただ友達というだけで は違う、恋人というだけでは足りない何か。私が欲しかったのはそういった枠組みを超えて、クソみたいな時代 の中でも共に生を紡げるつながりだった。HUMARIZINE は、微かな希望を託したその先の未来を、見るため にやっていると思う。私がこの生に対し、一切合切不満もなく幸せですと思っていたら、HUMARIZINE は つくらなかったはずだ。 一昨年始動した HUMARIZINE は私と松岡で始まり、昨年は佐野・村松が編集メンバーに加わり、そこから関 係がつくられていって、最終的に寄稿してくれた執筆者は 9 名となった。前号の「産地」を経て同年代の実践や 構想を世に投げかける媒体として、少しずつHUMARIZINEという共同体の輪郭が見えてきた。ポリフォニック、 アドホックなど、その様相をを表す言葉も出てきた。しかしまだ、私たちが目指したい共同体がどういうものな のかを具体的に明確に言葉として表すことはできていない。今号を通して私がみんなと考えていきたいのは共同 体という言葉ないし、それを私がつくることになったきっかけである家族という言葉だ。 広辞苑によると、「共同体」「家族」という言葉は以下のように言われている。 きょうどう ‐ たい【共同体】 (community) 血縁的・地縁的あるいは感情的なつながりや所有を基盤とする人間の共同生活の様式。共同ゆえ の相互扶助と相互規制とがある。特定の目的を達成するために結成される組織と区別される。協同体。「村落―」 「運命―」 か ‐ ぞく【家族】 夫婦の配偶関係や親子・兄弟などの血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団。社会構成 の基本単位。→家。 以上の説明で言うと、血縁によって規定される家族は共同体であるし、感情的なつながりのある HUMARIZINEのような様式も共同体である。しかし私には、血縁でつながっているだけの家族という共同体と、 感情的なつながりのあるHUMARIZINEという共同体の間には大きな差があるように思えてならないのである。 その差はいったいなんなのか、それを生み出しているのはなんなのか、今号を通して再考したい。きっとそれこ そが私がつくりたい共同体という言葉への明確な言葉であるし、家族というものに向き合うためのヒントになる はずだからだ。 家族という言葉については、これまでに何度も向き合おうとしたが、なかなか自分の中で消化できないことが多 く、避けてきたことも事実だ。しかしこの度自分が松岡と入籍し、法的に家族というものになった運びで向き合 わざるをえなくなった。 もちろん結婚しなくてもふたりで一緒にいることはできるが、「家族でない」という関係性ではふたりの間に社 会的な規制がかかることもある。それゆえ選んだ選択肢から何かを学び得るために、そこから目指すべき共同体 像を考え直す必要があるのだと思う。 今号は前号から引き続き佐野、そして日下と関口が新たにメンバーに加わり制作を進めている。このメンバーは 大学入学当初からの友人で普段から仲も良く、尊敬もしあえる面々だ。今号はそんな彼らを巻き込み、私と松岡 の入籍・結婚式をみんなでつくりあげていく道のりを通して考えたこと、それぞれの研究をつなげながら「家族」 というものを考えていく。冒頭にある私と松岡の出会いから今に至るまでのインタビューは、交際開始当初から 親しかったメンバー 3 人によって構成され、インタビューに出てきた話題から各コンテンツへと話を拡張してい る。最後にメンバー全員での座談会によって導き出されるであろう今号の「家族」ないし「共同体」への総括を 今号の締めとする。 この「はじめに」を書いている現在 4 月、政治的な影響もあり現在計画中の結婚式の様相も変化していってしま うかもしれない。同時に、その渦中でこの編集メンバー 5 人と「家族」号をつくることはそれぞれの思考にもあ らゆる変化をもたらすはずだ。出版する 7 月にどのような「家族」「共同体」を思い描くことができているのか。 そしてそれに向き合いながら結婚式へと向かう。


映像エスノグラフィーで見る個人の意味世界

日下真緒

個人のなかに立ち現れる意味世界にどのように向き合い、理解するのか。本稿では、映像エスノグラフィーによる「家族」のみかたについて検討する。筆者は、既存の教育機関に分類されない学びの場で、教育を担う人々が果たしている意味や役割を、映像制作を通じて明らかにする研究を行なっている。今号のテーマである「家族」を検討するにあたって、映像エスノグラフィーという方法論で『トランスナショナルな「家族」』について研究された大橋香奈さん(東京経済大学)にインタビューを行った。1人1人のなかに立ち現れる「家族」は、どのように理解できるのか。また、その調査手法の可能性について知見を深めていく。


入籍しました!

れいぽん

林与工場見学/ Making of Wedding Dress

れいぽん+佐野虎太郎

結婚式つくったものたち

れいぽん

共同体と社会と空間 遊戯性を通した共同性の創出について考える

関口大樹

共同体とはなんだろうか。今号のテーマでもある「家族」という存在も、共同体のあり方の1パターンとして挙げられるだろう。広辞苑の定義を借りるならば、共同体とは、ある共同性や共同意識を共有する社会集団であると考えることができる。では、各共同体を共同体として成立させる、人々の間で共有される共同性とはどのように形成されるのだろうか。本論考では、その共同性の創出のメカニズムについて考察することで、共同体の本質に迫ることを試みる。特に共同体を「社会(システム)」と「空間(性)」という概念から考察し、最終的には、遊戯性(遊び)を通した共同体の創出について考えてみたい。


結婚指輪これが全ぼうだ!

れいぽん

もの(者・物)たちの制作 人間と素材の主客がゆらぐ

松岡大雅

制作において、私たち人間と素材の関係はどのようなものだろうか。本テキストは、人間は素材を使っていると同時に、人間は素材につくらされている、という制作について検討するものである。人間は制作において、強い主体として振る舞い、素材をとことん客体化し、構想通りのアウトプットを求めがちだ。そういった一方的な制作を批判し、両者の細微な関係性に注目していく。このテーマを思索するにあたり、土と私の関係性を個人的な経験を考察したのちに、廃棄物と私の関係性を具体的な制作事例をもとに分析した。私たちも素材も、同じ〈もの〉として「家族」的と言えるかもしれない。


結婚式について

れいぽん

おわりに: No.02座談会

HUMARIZINE No.02メンバー

今号を総括するまとめとして、メンバーで「家族」を考察した。各人のテキストに対するフィードバックから始まり、私たちがそこから考えうる共同体、HUMARIZINEが目指すもの、今後どのようにHUMARIZINEの運営を行なっていくかなどといったことを議論した。


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